認知症の早期発見―目安
認知症を早期発見するための目安
認知症には、その徴候を示す初期症状があります。
そこで、家族が認知症の初期症状を見逃さない(認知症の早期発見)ことが大切となります。
そして、家族が早期発見して、それから正しく早期診断・早期治療できれば、本人とその家族のその後の生活が大きく変わってきます。
しかし、そういわれても、実際には、特に初期の認知症は、これを単なる老化による物忘れ(加齢によるもの忘れ)と区別することは、大変困難なことです。
そこで、その人が認知症なのかどうかを判断するための、具体的な目安がいろいろなところであげられています。
このページでは、こうした具体的な目安(認知症の定義をよりわかりやすくしたものくらいのもの)についてまとめてみます。
ただし、これらはあくまで一つの目安にすぎず、正確に認知症を診断するものではありません(医学的な診断基準ではありません)のでご注意ください。
認知症疾患医療センターのパンフレットより
ある都道府県の認知症疾患医療センターのパンフレットでは、「老化によるもの忘れ」と「認知症のもの忘れ」のちがいと題して、「認知症のもの忘れ」とは、次のようなものであるとしています。
以下、一部編集しています。
- 体験全体(体験自体)を忘れる(ヒントを与えられても思い出せない)
- 新しい出来事を記憶できない
- 時間や場所の見当がつかない
- 進行する
- 日常生活に支障がある
上記のうち、「体験全体(体験自体)を忘れる」とは、たとえば、これはよく使用される例なのですが、夕食で何を食べたかを忘れる、というようなレベルではなく、夕食を食べたこと自体の記憶がすっぽりとなくなっていることをいいます。
しかも、本人にはその病識(病気だと自覚すること)がありません。
「認知症の人と家族の会」による認知症の早期発見のめやす
公益社団法人である「認知症の人と家族の会」でも、会員の経験から、より具体的な認知症の早期発見のめやすをまとめています。
次のページを参照してください。
『絶対ボケない生活』(フレディ松川著)の認知症の定義より
『絶対ボケない生活』(フレディ松川著)では、認知症を次のように定義しています。
認知症とは、「粗大なる記憶障害」により、自分が行った行為自体をすぐに忘れてしまったり、「見当識」を失い、自分の目の前の相手が誰だか、いま何月何日か、さらには自分がいまいる場所すらわからない状況を言い、やがて、徘徊をはじめとする通常の一般的な社会生活を営めない状態になる「進行性」の病気である。
ポイントは、次の2つです。
1.「粗大なる記憶障害」または「見当識」を失うこと
粗大なる記憶障害
「粗大なる記憶障害」とは、単なる物忘れなどとは根本的に異なる記憶障害のことです。
たとえば、いまごはんを食べたことを忘れるというように、普通の人であったら、絶対にありえないような(信じられないような)記憶障害をいいます。
「見当識」を失うこと
「見当識(けんとうしき)」とは、いまの時間帯、季節、自分がどこにいるか、目の前にいる人が家族であるかどうかなど、基本的な状況を認識していることをいいます。
これを失うのが、認知症です。
2.進行性の病気であること
フレディ松川氏は、特に認知症が進行性の病気であることにこだわります。
認知症は、病気が進行するため、家族など回りの者に心身ともに深刻な影響を与えるからです。
しかも、「それはゴールのないマラソンのように、果てしなく続く…。」
加えて、「日々の成長が楽しみな赤ちゃんを見守る育児とは異なり、日々衰退していく人を支えていく介護に、明るい未来を見つけることは、正直とても難しい」(『みんなの認知症』松本ぷりっつ 岡崎杏里著)。
その他
河野和彦医師
認知症フォーラム 名古屋 2007年6月12日
河野医師は、2007年6月12日に名古屋で開催されたNHK主催の「認知症フォーラム」で、「加齢に伴う記憶の衰えと認知症」の違いについて、次のような具体例をあげて、説明しています。
例えば、昔活躍した歌手をテレビで見たが名前が思い出せないというのは正常な衰えであり、認知症とはほとんど関係がありません。しかし、農家の人が長年やってきた農薬の調合を間違えてしまった、ある日突然行き慣れたスーパーからの帰り道がわからなくなったという場合──これは、ほぼ認知症に間違いないといえるでしょう。長年培ってきた記憶が抜けてしまうのです。また、感情面では怒りっぽくなるということが挙げられます。普段穏やかな人が、なぜここで怒るのかというような場面で逆上する。これも認知症の疑いが強いです。
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